5年生以下で編成する新チームが神奈川No.1を競う、関東秋季大会神奈川大会は9月7日に開幕し、10月5日には横浜市の俣野公園・横浜薬大スタジアムで決勝が行われた。清水ヶ丘ジャイアンツと元宮ファイターズによる横浜勢対決となった決勝は、同点のまま終盤を迎える緊張の展開に。そして5回と6回に加点した清水ヶ丘が制して初優勝を飾り、11月開催の関東キップを手にした。
(写真&文=鈴木秀樹)
■決勝
◇10月5日◇横浜薬大スタジアム
清水ヶ丘ジャイアンツ(横浜)
010021=4
100000=1
元宮ファイターズ(横浜)
【清】松崎-長養
【元】金子、今井-遠藤
二塁打/川崎(清)
【評】1回裏、元宮は先頭の角田優翔が右前打で出塁、続く石井結心主将がたたきつけて角田が三塁に進み、山下櫻祐の適時打で先制。なおも好機は続いたが後続が倒れ、追加点は奪えず。すると直後の2回表、清水ヶ丘は川崎晃輔の左越え二塁打から好機を得て1点を奪い、同点に。中盤は両軍ともあと1本が出ずホームが遠かったが、清水ヶ丘は5回、内野ゴロ敵失を足掛かりに、野選と内野ゴロの間に勝ち越しの1点を奪うと、松崎星太朗主将の中前適時打でもう1点。6回にも川崎の安打と田中健杜の適時打で1点を加え、元宮の反撃を許さず、大会初優勝を果たした。
優勝
=初
しみずがおか
清水ヶ丘ジャイアンツ
[横浜市]
強豪ひしめくハマの王者。いざ関東へ
64球で6回完投。「フォアボールを出さないよう、コントロールには気をつけて投げました」という清水ヶ丘ジャイアンツのエース左腕・松崎星太朗主将が、マウンド上で大きくガッツポーズをした。
142㎝、34㎏。小柄だが、闘志と躍動感にあふれる投球で、元宮ファイターズ打線を封じた。打っても3打数2安打と、同じく2安打の六番打者、川崎晃輔とともに打線をけん引、八面六臂の活躍だった。

「バッティングも好きだけど、今はピッチングが楽しいです。三振とったときとか気持ちいいし、一番好きなのは、自分が試合の最後を締めくくれるところです」と松崎主将。決勝はその言葉どおりに、最初から最後まできっちりと投げ切り、充実の表情で金メダルを手にした。
力投のエースを支えたのは、好守備を連発した野手陣だ。
初回一死、先制点を奪われた直後に挟殺プレーでの失策はあったものの、その後はノーミス。立て続けのライナー性の打球を、レフトの田中健杜とライトの相馬氷雨がそれぞれ好捕してピンチを脱し、4回裏二死二、三塁のピンチも堅守で切り抜けた。
2回表、川崎の二塁打(上)から同点に。5回表は無死一、三塁から内野ゴロで三走・相馬が生還(下)

5回には敵失から好機を得ると、内野ゴロの間に勝ち越しのホームを陥れ、松崎主将が鮮やかに中前にはじき返してもう1点。6回にも安打の川崎を田中が適時打でかえして追加点を挙げ、勝利を引き寄せた。
この大会での清水ヶ丘の最高成績は、1年前の県4強だった。「昨年、4年生大会で県大会準優勝はしてるんです。実力的には、まずまずという手応えはあったんですよね」と益留順一監督。県新人王とチーム史を一気に塗り替えた要因については「打つほうはどうしても波があります。守備がしっかりできれば、勝負にはなると思っていたんですが、なかなか…。でも、外野の守備などは良くなったと思います」と話した。

6回表一死三塁、田中健杜のテキサス安打(上)が4点目の適時打に。写真下は表彰式

4年生大会の決勝で敗れたのは、全国区の強豪・平戸イーグルス。同じ横浜市のチームだ。「そうなんです。平戸さん、戸塚アイアンボンドスさん、今日戦った元宮さんもそう。とにかくまず、横浜で勝たないことには…」と益留監督。「まずは、守備をもっと進化させないとですね」と、その目はすでに、これから先を見据えている。
まずは、11月の関東大会。松崎主将は「関東大会でも完投できるように頑張ります」と気合満点で、「オフの間もいつも以上に練習して、打たれないピッチャーになりたい」と、全国大会を目指す来季にも目を向けている。
準優勝
もとみや
元宮ファイターズ
[横浜市]
堅守と機動力の古豪健在
優勝した2013年以来、12年ぶりの決勝進出を果たした元宮ファイターズ。1回裏には鮮やかな先制劇も、以降はホームが遠かった。
「初回にあと1点、2点取れていれば、展開は違っていたかもしれませんね…。走塁ミスです」
浅井保彦監督がため息をついた。
1回裏一死三塁、三番・山下櫻祐の適時打(上)で三走の角田優翔がかえり先制(下)

先制点を奪い、なお一死三塁の場面で、ライナー性の外野フライ。決して簡単にタッチアップを決められる場面ではなかったはずだが、これを「走塁ミス」と言えるのは、おそらく、それだけの機動力があり、練習も積んでいるからこそなのだろう。
浅井監督は「そうですね。走塁だけは細かく、しつこく言うようにしているんですよ」とうなずく。「ただ、走者が出ないことには、なんとも…」と苦笑いを浮かべるのだった。
「今日の相手投手はスピードもあり、緩急の使い方がうまかったですね」と、好投の清水ヶ丘・松崎主将を称賛。「これからは、こうした緩急に、うまくついていくバッティングも重要になってきますね」。打撃については、この日の出来自体をそこまで気にしている様子はなく、まだこれから、といった様子だ。
4回裏、金子葵(上)と今井裕寿(下)の連打で好機をつくるも、得点ならず

勝った清水ヶ丘同様、こちらも守備での見せどころは多かった。「そうですね。バントシフトなんかも、形はできていました。あとは、ここからどれくらい、練習を積んで、精度を上げていけるかですね」(同監督)
前回、この県新人戦を制したのは2013年。その年の8月には、全日本学童マクドナルド・トーナメントに出場して3回戦まで進出していた。全国初出場は2007年(初戦敗退)で、創立は1972年で50年以上の歴史をもつ古豪として知られる。こちらも来季は激戦区の横浜を勝ち抜き、13年ぶり3回目となる全国出場が大目標となりそうだ。

